トビ「俺はトビ!しほの旦那!!」
「げひゃひゃひゃひゃひゃ!!どうしたトビぃ!元気がねぇぞぉ!!」
「くっ……」
しほの岩をも砕くフィンブルクラッシュが、ブレイブダークの耐久値をがりがり削っていく
モンスターであるしほに、武器耐久は存在しない。このまましほの拳と刃を交わし続ければ、いずれ武器が壊れ――死ぬ。
ならば、これでどうだ――!
「はぁああ!」
「なに!?」
そうだ、もう耐久値など気にしても仕方がない。絶影。この一撃に全てを賭ける!
「くっ」
ブレイブダークによる絶影の威力は凄まじく、しほの拳を一瞬で弾き遂にその喉元まで迫った!
俺は勝利を確信した。勇者の短剣、ブレイブダークによる絶影だ。しほに防ぐ術はないはずだった。
だが――
「な、に……」
「ひひ、ひひひ……ぶひひひひひひ!!今何かしたかぁ!?」
一瞬何が起きたのかわからなかった。
ただ、しほの首に到達するはずだった刃は見えない壁に阻まれ……壊れた。しまった。しまったしまったしまった
――ブレス。そのMTスキル、虎障壁。
完全に失念していた。しほを頭の悪いモンスターだと思い込み、ブレスは使えないと決め付けていた。始めからスーパーサイトを使っていればこんなことには……
「ぶひひ。どうした?予備の武器は出さないのかぁ?」
「予備はない。急な戦闘だったからな……あれで終わりだ」
豚の口元が醜く歪む
「そうかよ。だったら俺の勝ちだなぁ!!」
「……がっ」
しほの拳が俺の脇腹を捉え、メキメキと嫌な音を立てながら吹き飛ばす。
俺は、死ぬのか?あんなくだらないことが原因で?ありえねぇ。トビさんキレそう
そう、事の起こりは一週間前。とある女生徒に話しかけられたことが原因だった。
「冬川君、ちょっといいかな?」
昼休み。食堂で友人の加賀と飯を食っていると、突然三崎鳴という女が声をかけてきた。
因みに冬川とは俺の事。冬川 鳶(ふゆかわ とび)。超絶イケメンな俺の名前。ダサいと思う奴は死んだほうがいい。
ついでに紹介しておくと、俺と一緒に飯を食っている俺は加賀 光(かが らいと)。で、縮めてカライトと呼ばれている。
くっそダサいネーミングである。光と書いてライトと読ませるあたり、DQNネーム感がひどい。
おまけに性格も最悪だ。面白くもないくせにすぐ調子に乗って……いや、乗りすぎてクラスからはみられている。
長くなるので詳しいことは後で話すが、簡単にいうと教室でうんこを投げまくり、オカマ代表のリリョにボコボコにされたのだ。それ以降カライトは存在を完全にスルーされ、そのカライトと絡み続ける俺は時折うんこトビと呼ばれるようになった。底辺の仲間入りである。まぁ、超絶イケメンハイスペックな俺にそんなことは関係ないのだが。
その俺たち底辺(と思われている)コンビに、何の用があるのか
首をかしげていると、三崎鳴はもじもじしながら紺色の四角い箱を差し出してきた
「その……こ、これあげるっ!」
弁当箱だった。
俺様の天才的頭脳が一瞬固まる。What?Why?
しかし、さすがは俺様。デモーズの対策なんてとっくにしている。すぐに思考を取り戻した俺は、一つの答えに辿り着く。――これは罠だ。
「な、にゃにがもくへきだっ!」
僕はキメ顔でそう言った。
少し噛んでしまったかも知れないが、気にしない。そう、気のせいである。
俺のスーパーサイトに呆気にとられた三崎鳴だったが、すぐさまカウンターをかましてくる。
「も、目的ッ!?え、えと、その……お昼、一緒に食べたくて」
三崎鳴は顔を少し伏せ、もじもじしながらそう答える。心なしか頬が少しピンク色に染まっているようだ。
ふっ……どうやら相手は薄ピンのようだ。Countまで上り詰めた俺は手加減してやらねばなるまい。強者の余裕というやつだ。くぅ〜、おれっていいやつ?
とりあえず先程の言葉に対して理路整然と答えてやるとするか
「悪いが、お前の用意した飯なんて食えたもんじゃない。何が入っているかわからないからな。」
「それに一緒に食べる?お前と?普通に嫌なんだけど」
「毒なんて入れてないよ!?え、っていうか一緒に食べることさえ許されないのっ!?」
「お前はうんこやゴキブリと一緒に飯が食えるのか?食えないだろ。それが俺の気持ちだよ。」
「あとさ、急になに?俺らなんか接点あった?正直キモいよお前」
完璧だった。ダイレクトテイクでブロックからのインデランチャだった。エレメンタルドライヴかも知れない。
薄ピン風情がカウンコである俺様に絡んだのが間違いだったなwざまぁwww身の程を思い知れw
俺は更にトドメとばかりに夢想剣を放つ
「わーるぃけど俺っ、女に興味ないからぁぁぁぁあああ!!」
言ってやった。ジョジョ立ちで。
女はしばらく沈黙した後、こう呟いた
「そっか、わかったよ……私が女だからダメなんだね?」
「はっ?」
意味がわからなかった。いや、本当に。なにこれ新スキル?こいつNなの?新ジョブテストなの?
「愛があるなら性別の壁くらい乗り越えてみせろと……そういうことなんだね?」
「何語喋ってんだてめぇ」
ウチュウジンデスカ?
「いいぜ!やってやるよ!覚悟はいいかトビ、お前の嫁はこの俺だぁ!!」
「いや、その、僕は別に性別を変えろなんて言ってないし、当然覚悟もしてないわけで、お嫁さんを募集した覚えもないわけだけれども……」
「遺言はあの世で聞いてやるぜ!」
「僕殺されるのっ!?しかもそれお前も死んでるよね!?」
「ハネムーンの行き先は地獄だぁ!!」
「地獄の超特急ううう!やめて!そうだ僕ハワイ行きたい!南国を満喫したい!」
「安心しろ……地獄の最南端まで連れて行ってやる」
「行こう、行こう、ゴートゥヘル♪たしゅけて閻魔さまぁあああ!!」
「くくく……絶対にお前好みの男になってやるからな。首を洗って待っているがいい!はーっはっはっは!」
「ああぁぁぁだから僕は男に興味なんて……あぁ、行っちゃった」
涙目でキャラ崩壊しながら懇願する僕を置いて、三崎鳴は走り去っていった。
まぁいいか。本当に男になんてなれるわけがない。
ちょうど飯を食い終わったカライトは、「ドンマイ」と肩を叩いて立ち去っていった。居たのかよ
みてたなら助けろよ……
因みに三崎鳴はその後の授業は全て欠席したらしい
――一週間後。俺はカライトと食堂で飯を食っていた。あれから何の音沙汰もなかった。
冗談だったのか?いや、だが……あの電波女はずっと休み続けている。どういうことかわからないが、諦めてくれていることを祈ろう
「甘ぇ!その考え!砂糖水より甘いぜぇええ!」
「ひっ!?その声は……!」
「久しぶりだなトビィ……」
突然心を読まれた俺は、恐る恐る振り返る。するとそこには……
モンスターがいた
「誰!?」
「私の顔を忘れたか」
じっくり顔を確認してみる
豚のような醜顔だった。
「だから誰!?」
「三崎鳴だぁ!」
「はぁ!?あいつは女だろう!?少なくともお前みたいな化け物じゃねぇよ!」
「くっくっく……性別の壁など、越えてみせると言ったはずだぁ!」
「マジで越えちゃったの!?っていうか人間の壁を越えちゃったよ!種の壁を越えてるよ!」
「さぁ、愛するものの顔を忘れた罰だ……しんでもらう!」
「なんで!?そもそも愛してねぇよ!」
「なんだと!?ぶっころしてやらぁぁあああ!!」
どっちみち殺す気だろ!?
「くっ」
やるしかないのか……しかし、戦闘の準備が出来ていない。幸いにも武器は交換に出そうと思っていたブレイブダークが一本あるが、生だ。加工していない。
新種なだけあって威力は高めだが、それはタガーにしては高いというだけだ。
基本威力の低いタガーは、加工によって威力が大きく左右される。生で使うなど論外だ。しかし――
「この状況なら仕方がない……か!?」
突然、強烈な衝撃が走る。殴られたのだ。俺は数メートル吹っ飛ばされるが、なんとか受け身を取り体勢を立て直す。
当然ガードはしたが、なんという威力だ。スキルなしでこれとは……
「ぶひひひひ……さすがはトビ。この鍛えられし男根パワーに耐えるとはな。」
「ふん、案外大したことないな。凄まじいのは外見の無様さだけらしい」
虚勢だった。正直、本格的にスキルを使われると耐えられる自信が……えっ、今なんてったあいつ。俺なにで殴られたの!?
くそ、これは人間の力じゃない。コンポもクソもないモンスターの力だ。
それを意志を持った奴が振り回している……まともにぶつかっても勝機はない。
考えろ考えろ考えろ。何か、何かないか。奴の弱点は……!
情報が足りない。どんなスキルを使うか。それがわからなければ対策のしようがない
俺はまず奴の姿を観察した。
二メートルはあろう巨躯に、二本の角が生えた豚のような頭部と、オークのように腹の出た体をしている。
なんだこいつは……人間じゃない
そういえば、戦争でこいつとよく似たモンスターと戦った覚えがある。
まさか……何か関係が?いや、戦争は終わったんだ。……考えるのは後だ
「まずは倒す。話はそれから」
想像する思考から戦闘する思考に切り替える。奴と同じなら、マルコシアスも通用しないだろう。
ならば刺し違える覚悟でハフカンを叩き込むか?いや、奴と心中するなど死んでも御免だ。
なら、防御スキルを付加してエミュカウンター。それしかない
俺は素早くソニックオーラ、ガオラ、リヴィ、クエーカ、マジックスタンスを発動し、化け物と向かい合った。
外見からして奴は牛の亜種だ。そうでなくてもルナティックレイドのモンスターのスキルは単調。最凶のモンスターと銘打って登場したリンドヴルムも、デッドエンドという全体攻撃スキルだった。
おそらく奴も同じだろう……
瞳を一瞬だけ閉じ、意識を集中の海に沈める。このカウンターを外せば終わりだ。確実に合わせる。己の経験、意志、判断、その全てを次のカウンターに注ぎ込む。
……こいつも倒せばガーディアンイアリングを落とすのだろうか。無論、こんな醜悪な化け物のアイテムなど装備したくはないが。
――俺は強い。何も考えず適当にやってる連中とは違う。計算して作られたスタイル。バロネットの時点で、俺はそこらのカウントなんぞよりずっと強かった。
膨大な時間を注ぎ込んでいたわけではないが、プレイ出来る時間は全て最大の形で利用した。
誰よりも狩りの効率を追求してきた。同時期同課金でやっている奴相手なら間違いなく相手にならない。
このゲームだけじゃない。俺は何をやっても最強だ。同じ条件で始めた相手なら……いや、それ以上の相手でもある程度なんとか出来る。
得られるものは全て得る。新しいスキルや仕様が出れば即座に実験、検証し最大限に活かす。もちろん手に入れた情報は公開せず秘匿し、しばらく自分だけのものにする。
人間関係に問題が出れば、あらゆる手段を用いて排除する
「くっ……」
しほの岩をも砕くフィンブルクラッシュが、ブレイブダークの耐久値をがりがり削っていく
モンスターであるしほに、武器耐久は存在しない。このまましほの拳と刃を交わし続ければ、いずれ武器が壊れ――死ぬ。
ならば、これでどうだ――!
「はぁああ!」
「なに!?」
そうだ、もう耐久値など気にしても仕方がない。絶影。この一撃に全てを賭ける!
「くっ」
ブレイブダークによる絶影の威力は凄まじく、しほの拳を一瞬で弾き遂にその喉元まで迫った!
俺は勝利を確信した。勇者の短剣、ブレイブダークによる絶影だ。しほに防ぐ術はないはずだった。
だが――
「な、に……」
「ひひ、ひひひ……ぶひひひひひひ!!今何かしたかぁ!?」
一瞬何が起きたのかわからなかった。
ただ、しほの首に到達するはずだった刃は見えない壁に阻まれ……壊れた。しまった。しまったしまったしまった
――ブレス。そのMTスキル、虎障壁。
完全に失念していた。しほを頭の悪いモンスターだと思い込み、ブレスは使えないと決め付けていた。始めからスーパーサイトを使っていればこんなことには……
「ぶひひ。どうした?予備の武器は出さないのかぁ?」
「予備はない。急な戦闘だったからな……あれで終わりだ」
豚の口元が醜く歪む
「そうかよ。だったら俺の勝ちだなぁ!!」
「……がっ」
しほの拳が俺の脇腹を捉え、メキメキと嫌な音を立てながら吹き飛ばす。
俺は、死ぬのか?あんなくだらないことが原因で?ありえねぇ。トビさんキレそう
そう、事の起こりは一週間前。とある女生徒に話しかけられたことが原因だった。
「冬川君、ちょっといいかな?」
昼休み。食堂で友人の加賀と飯を食っていると、突然三崎鳴という女が声をかけてきた。
因みに冬川とは俺の事。冬川 鳶(ふゆかわ とび)。超絶イケメンな俺の名前。ダサいと思う奴は死んだほうがいい。
ついでに紹介しておくと、俺と一緒に飯を食っている俺は加賀 光(かが らいと)。で、縮めてカライトと呼ばれている。
くっそダサいネーミングである。光と書いてライトと読ませるあたり、DQNネーム感がひどい。
おまけに性格も最悪だ。面白くもないくせにすぐ調子に乗って……いや、乗りすぎてクラスからはみられている。
長くなるので詳しいことは後で話すが、簡単にいうと教室でうんこを投げまくり、オカマ代表のリリョにボコボコにされたのだ。それ以降カライトは存在を完全にスルーされ、そのカライトと絡み続ける俺は時折うんこトビと呼ばれるようになった。底辺の仲間入りである。まぁ、超絶イケメンハイスペックな俺にそんなことは関係ないのだが。
その俺たち底辺(と思われている)コンビに、何の用があるのか
首をかしげていると、三崎鳴はもじもじしながら紺色の四角い箱を差し出してきた
「その……こ、これあげるっ!」
弁当箱だった。
俺様の天才的頭脳が一瞬固まる。What?Why?
しかし、さすがは俺様。デモーズの対策なんてとっくにしている。すぐに思考を取り戻した俺は、一つの答えに辿り着く。――これは罠だ。
「な、にゃにがもくへきだっ!」
僕はキメ顔でそう言った。
少し噛んでしまったかも知れないが、気にしない。そう、気のせいである。
俺のスーパーサイトに呆気にとられた三崎鳴だったが、すぐさまカウンターをかましてくる。
「も、目的ッ!?え、えと、その……お昼、一緒に食べたくて」
三崎鳴は顔を少し伏せ、もじもじしながらそう答える。心なしか頬が少しピンク色に染まっているようだ。
ふっ……どうやら相手は薄ピンのようだ。Countまで上り詰めた俺は手加減してやらねばなるまい。強者の余裕というやつだ。くぅ〜、おれっていいやつ?
とりあえず先程の言葉に対して理路整然と答えてやるとするか
「悪いが、お前の用意した飯なんて食えたもんじゃない。何が入っているかわからないからな。」
「それに一緒に食べる?お前と?普通に嫌なんだけど」
「毒なんて入れてないよ!?え、っていうか一緒に食べることさえ許されないのっ!?」
「お前はうんこやゴキブリと一緒に飯が食えるのか?食えないだろ。それが俺の気持ちだよ。」
「あとさ、急になに?俺らなんか接点あった?正直キモいよお前」
完璧だった。ダイレクトテイクでブロックからのインデランチャだった。エレメンタルドライヴかも知れない。
薄ピン風情がカウンコである俺様に絡んだのが間違いだったなwざまぁwww身の程を思い知れw
俺は更にトドメとばかりに夢想剣を放つ
「わーるぃけど俺っ、女に興味ないからぁぁぁぁあああ!!」
言ってやった。ジョジョ立ちで。
女はしばらく沈黙した後、こう呟いた
「そっか、わかったよ……私が女だからダメなんだね?」
「はっ?」
意味がわからなかった。いや、本当に。なにこれ新スキル?こいつNなの?新ジョブテストなの?
「愛があるなら性別の壁くらい乗り越えてみせろと……そういうことなんだね?」
「何語喋ってんだてめぇ」
ウチュウジンデスカ?
「いいぜ!やってやるよ!覚悟はいいかトビ、お前の嫁はこの俺だぁ!!」
「いや、その、僕は別に性別を変えろなんて言ってないし、当然覚悟もしてないわけで、お嫁さんを募集した覚えもないわけだけれども……」
「遺言はあの世で聞いてやるぜ!」
「僕殺されるのっ!?しかもそれお前も死んでるよね!?」
「ハネムーンの行き先は地獄だぁ!!」
「地獄の超特急ううう!やめて!そうだ僕ハワイ行きたい!南国を満喫したい!」
「安心しろ……地獄の最南端まで連れて行ってやる」
「行こう、行こう、ゴートゥヘル♪たしゅけて閻魔さまぁあああ!!」
「くくく……絶対にお前好みの男になってやるからな。首を洗って待っているがいい!はーっはっはっは!」
「ああぁぁぁだから僕は男に興味なんて……あぁ、行っちゃった」
涙目でキャラ崩壊しながら懇願する僕を置いて、三崎鳴は走り去っていった。
まぁいいか。本当に男になんてなれるわけがない。
ちょうど飯を食い終わったカライトは、「ドンマイ」と肩を叩いて立ち去っていった。居たのかよ
みてたなら助けろよ……
因みに三崎鳴はその後の授業は全て欠席したらしい
――一週間後。俺はカライトと食堂で飯を食っていた。あれから何の音沙汰もなかった。
冗談だったのか?いや、だが……あの電波女はずっと休み続けている。どういうことかわからないが、諦めてくれていることを祈ろう
「甘ぇ!その考え!砂糖水より甘いぜぇええ!」
「ひっ!?その声は……!」
「久しぶりだなトビィ……」
突然心を読まれた俺は、恐る恐る振り返る。するとそこには……
モンスターがいた
「誰!?」
「私の顔を忘れたか」
じっくり顔を確認してみる
豚のような醜顔だった。
「だから誰!?」
「三崎鳴だぁ!」
「はぁ!?あいつは女だろう!?少なくともお前みたいな化け物じゃねぇよ!」
「くっくっく……性別の壁など、越えてみせると言ったはずだぁ!」
「マジで越えちゃったの!?っていうか人間の壁を越えちゃったよ!種の壁を越えてるよ!」
「さぁ、愛するものの顔を忘れた罰だ……しんでもらう!」
「なんで!?そもそも愛してねぇよ!」
「なんだと!?ぶっころしてやらぁぁあああ!!」
どっちみち殺す気だろ!?
「くっ」
やるしかないのか……しかし、戦闘の準備が出来ていない。幸いにも武器は交換に出そうと思っていたブレイブダークが一本あるが、生だ。加工していない。
新種なだけあって威力は高めだが、それはタガーにしては高いというだけだ。
基本威力の低いタガーは、加工によって威力が大きく左右される。生で使うなど論外だ。しかし――
「この状況なら仕方がない……か!?」
突然、強烈な衝撃が走る。殴られたのだ。俺は数メートル吹っ飛ばされるが、なんとか受け身を取り体勢を立て直す。
当然ガードはしたが、なんという威力だ。スキルなしでこれとは……
「ぶひひひひ……さすがはトビ。この鍛えられし男根パワーに耐えるとはな。」
「ふん、案外大したことないな。凄まじいのは外見の無様さだけらしい」
虚勢だった。正直、本格的にスキルを使われると耐えられる自信が……えっ、今なんてったあいつ。俺なにで殴られたの!?
くそ、これは人間の力じゃない。コンポもクソもないモンスターの力だ。
それを意志を持った奴が振り回している……まともにぶつかっても勝機はない。
考えろ考えろ考えろ。何か、何かないか。奴の弱点は……!
情報が足りない。どんなスキルを使うか。それがわからなければ対策のしようがない
俺はまず奴の姿を観察した。
二メートルはあろう巨躯に、二本の角が生えた豚のような頭部と、オークのように腹の出た体をしている。
なんだこいつは……人間じゃない
そういえば、戦争でこいつとよく似たモンスターと戦った覚えがある。
まさか……何か関係が?いや、戦争は終わったんだ。……考えるのは後だ
「まずは倒す。話はそれから」
想像する思考から戦闘する思考に切り替える。奴と同じなら、マルコシアスも通用しないだろう。
ならば刺し違える覚悟でハフカンを叩き込むか?いや、奴と心中するなど死んでも御免だ。
なら、防御スキルを付加してエミュカウンター。それしかない
俺は素早くソニックオーラ、ガオラ、リヴィ、クエーカ、マジックスタンスを発動し、化け物と向かい合った。
外見からして奴は牛の亜種だ。そうでなくてもルナティックレイドのモンスターのスキルは単調。最凶のモンスターと銘打って登場したリンドヴルムも、デッドエンドという全体攻撃スキルだった。
おそらく奴も同じだろう……
瞳を一瞬だけ閉じ、意識を集中の海に沈める。このカウンターを外せば終わりだ。確実に合わせる。己の経験、意志、判断、その全てを次のカウンターに注ぎ込む。
……こいつも倒せばガーディアンイアリングを落とすのだろうか。無論、こんな醜悪な化け物のアイテムなど装備したくはないが。
――俺は強い。何も考えず適当にやってる連中とは違う。計算して作られたスタイル。バロネットの時点で、俺はそこらのカウントなんぞよりずっと強かった。
膨大な時間を注ぎ込んでいたわけではないが、プレイ出来る時間は全て最大の形で利用した。
誰よりも狩りの効率を追求してきた。同時期同課金でやっている奴相手なら間違いなく相手にならない。
このゲームだけじゃない。俺は何をやっても最強だ。同じ条件で始めた相手なら……いや、それ以上の相手でもある程度なんとか出来る。
得られるものは全て得る。新しいスキルや仕様が出れば即座に実験、検証し最大限に活かす。もちろん手に入れた情報は公開せず秘匿し、しばらく自分だけのものにする。
人間関係に問題が出れば、あらゆる手段を用いて排除する