失踪警察官は何がしたかったのか 自殺?強盗? エリートの胸に巣くったものとは…  警視庁の現職警察官が勤務中に、実弾入りの拳銃を持ったまま忽然(こつぜん)と姿を消したのだからただ事ではない。

綾瀬署中央本町交番の巡査長、小林英正容疑者(24)は失踪から3日後の10月18日夜、交番から約90キロ離れた宇都宮市内で発見され、銃刀法違反容疑で逮捕された。拳銃以外に目出し帽を持ち歩き、強盗目的を連想させる一方、約200万円の現金も見つかり、謎が謎を呼んでいる。父親が検察官を務めたという家庭で育ち、巡査部長試験にも最短で合格するというエリート街道を歩み始めていた男の胸中には、何が巣くっていたのか−。
■「少年が騒いで…」苦情処理?で出動 誘拐事件のプロが追跡
 「小林英正だな」
 JR宇都宮駅(宇都宮市)近くのビジネスホテル。18日午後7時半ごろ、外からロビーに入ってきた小林容疑者は警視庁の捜査員に取り囲まれ、声をかけられた。黒っぽい上着の私服姿で、バッグを大切そうに抱えていた。
 宿泊していた部屋に連れて行かれ、バッグから拳銃が見つかり、銃刀法違反容疑(加重所持)で逮捕された。捜査員に逮捕容疑を読み上げられても、ぶるぶると体を震わせるだけで、何も言葉を発しなかった。拳銃には、実弾5発が込められたままだった。
 小林容疑者が行方をくらましたのは、15日午後11時ごろ。足立区内の交番で当直勤務中だった。上司の50代の男性巡査部長に「少年が騒いでいるという苦情があったので、現場に向かいます」と伝え、自転車で出発した。
 現場は交番から北に約1キロのはずなのに、しばらくたっても到着したという連絡がない。綾瀬署が同11時半ごろ、別の用件で無線で連絡したときには応答があったが、その直後の巡査部長の無線には応答せず、公用と私用とも携帯電話はつながらなくなった。
 綾瀬署員らが周辺を捜索し、16日午前1時半ごろ、苦情の現場とは反対方向、交番から南東に約2キロの足立区西綾瀬の路上で、自転車が乗り捨てられているのを発見。同5時ごろには近くの小川から制帽と無線機が見つかった。
 事件に巻き込まれたのか。自らの意思で失踪したのか。警視庁は、誘拐事件などのプロフェッショナルである「捜査1課特殊班」や、防犯カメラの解析を専門にする「捜査支援分析センター」のメンバーを投入し、本格的に行方を追いかけた。
 すると…。
■制服、制帽を捨て、新幹線で宇都宮へ 200万円の現金も
 16日早朝、交番から約10キロ離れたJR東京駅の男子トイレで、制服や雨がっぱが入ったバッグが見つかり、落とし物として届けられた。
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