[2]
10/07 21:54
>>1

「オオカミ様!」俺は叫んで、立ち上がろうとした。が、声も出ず、身体も動かない。
少年がオオカミ様に話し掛けているが遠過ぎて声も聞こえない。
なんとか動こうともがいてみるが、辛うじて手指の先が動くくらいだ。
俺は動く指の先に全神経を集中し、動け動け動けと念じていた。
すると、なんとか腕までが動くようになった。丹田に気合を集中して呼吸を錬る。

「ふっ!」気合を入れ、一気に立ち上がると全身が辛うじて動くようになった。
ノロノロと足を出し、オオカミ様と少年が話している方へ歩き出す。
通り過ぎていく巫女達が不振気に俺を注視するが、お構い無しに歩みを進めた。
果てしなく長い距離を徐々に詰めていくとようやく二人の話し声が聞き取れる程の距離まで辿り着いた。
「・・・ありがとう。貴方には苦労を掛けますね。」
鈴の鳴るような澄んだオオカミ様の声が聞こえる。俺はいつの間にか涙を流していた。
「では、これをお渡ししておきます。」
少年がオオカミ様に何かを手渡す。ああ、あれは銀の髪飾りだ。少年は約束を守ってくれたのだ。
オオカミ様はそれを受け取ると、胸に抱くようにして手を交差させた。
オオカミ様の瞳から、涙が流れるのが見えた。



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